【教育環境】大学をめぐる市場状況③
前回に引き続きまとめていこうと思います。
企業目線で大学を見ていきます。
さて、今回は株式会社インテージリサーチの大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究報告書をもとに考えます。
◎学修成果への期待とは
大学側の学修成果公表への期待は「社会への説明責任が果たせること」でした。つまりはインフォームド・コンセントをしっかりと果たすということです。
ここについて今回の目線ですと二軸の突っ込みが入ると思います。
まず一点目ですが、この学修成果についてインフォームド・コンセント自体が目的となっており、大学の改善に使うという意識が足りないということです。
二点目ですが、採用側が期待する情報公開は、採用側にとって定量的で均一化された期待している情報であるのか?ということです。
この二点目について今回は焦点をあてます。
◎採用側が期待していることは
少なくとも採用担当者レベルでは、大学での学修成果について期待値は高くありません(ただし、専門分野や技量に関わることは別です)。
理由としては新卒採用にて学生に期待することは「コミュニケーション能力」や「自律、自立できる若者」であるからです。
ざっくり言えば、自社の色に染めやすく、ハイパフォーマンスを期待できる学生が良いのです。
どのような新卒が会社に欲しいかは脇に置いておくとして、大学の教育にそれを期待されると大学の存在意義に疑問が出てしまいます。
そのためこのギャップがあることは認識しておくべき点だと個人的には思います。
◎今後変わる可能性があるとすれば
今後の就活などで学修歴「も」見られることが出てくるかもしれません。
5年ほど前から少しずつ言われるようになりました。
わかりやすい資格には現れない、留学やボランティア、課外活動を通して人物を多面的に評価するケースがそれにあたります。
◎そんなことが本当にできるのか?
簡単に言えば、活動歴をまとめたポートフォリオ機能を共有もしくは提出させることができれば学修歴を確認することが可能です。
大学入試で人物評価をもとにした入試形態がアップグレードされていますが、高校でもポートフォリオ(教育界では学習の過程や成果などの記録を、計画的にファイル等にためておくことを指します)が活用され始めています。
◎以下私見です
ポートフォリオは使わなくとも、企業が個人のユニークネスをどれだけ知りたいかによって、選考中の質問や課題作文などでいくらでも工夫できます。
ただし、一括採用から通年採用に移行するとしたら個人の適性や可能性をより一層確認することになると思います。
転職の場合は転職サイトの情報がポートフォリオとなっており、そのサマリーとして各人が作成した職務経歴書を確認しますので、新卒の通年採用もそのようなイメージでシフトするのではないでしょうか。
そうすると学生側も採用側も語れる/聞きたいリソースの提供としてポートフォリオが活用されるかもしれません。
◎最後に
なお、学歴での判断は無くならないだろうと思います。
あくまで学歴をフィルターとして機能させているのであれば、ですが。
賛否両論でしょうが、入学までの努力や工夫を個人の素質として認め、それを最大公約数で絞るのであれば、手段としては妥当だと思います。